2013年11月12日火曜日

21世紀の国家元首のあり方―天皇制について素人の考察

 さて言論の自由が憲法で謳われているはずのこの国で、最大のタブーになっているテーマの一つに天皇制の議論があります。

 一昔前ですと週刊誌に皇室に関するネガティブな記事が載ると、右翼が出版社の社長宅に銃を撃ったものです。
 政府が公式に不敬罪として告発するには世論が気になるので、こうした非公式の処罰を選んだのでしょう。また公式には、射撃した右翼は政府の命令でやったのでなく、自主的な行動としていますが、本当のところはどうでしょうか。因みに、右翼の方でも社長を射殺するつもりはなく、塀を壊して威嚇するだけというのも、意図的でしょう。
 これが地方自治体の市長となると刑罰の重さが違います。右翼の弾丸は命中し、何人かの市長がこれまで処刑されています。

 ネット時代になって、ある意味、言論の自由は憲法通りに保証されるようになりました。ほとんど誰もアクセスしない、一般庶民のブロガーに対して、右翼の方でも彼ら一人一人にいちいち発砲していたのでは、弾がもったいない、との判断でしょうか。

 ところで天皇制は必要か不要か。まずその歴史的背景はとりあえず無視して、現代日本政治において、天皇制のメリット、デメリットについて考えてみましょう。

 現代の日本の政治体制において、選挙で選ばれた実質的な行政のリーダーである総理大臣と、天皇という世襲の国家元首(誤解を招く言葉ですがここでは英語のsovereignの訳語)が分離しているのは、実は非常に都合がいいのです。

 日本のマスコミは首相に批判的記事を書きますが、天皇に対しては一般的に書きません。政府の批判が少しもできないようでは言論の自由がないということになってしまいますし、ジャーナリストも仕事をしてないといことになってしまいます。国民の側に立って政府がおかしなことをしないよう、見張るのが、本来の政治ジャーナリストの使命だからです。あるいはガス抜きの意味でも政府の批判的記事は効果があるでしょう。だからマスコミは首相を批判するのです。
 
 しかしながら、元首たる天皇まで批判してしまうと、国家体制自体を否定する言論、革命を惹起する言論ということになってしまいます。だからマスコミは天皇を批判しないのです。
 象徴天皇は政治に関与できないから、政治問題は天皇でなく、首相に責任がある、というのがその表向きの理由でしょうか。

 共和国の大統領だとこういうわけにはいきません。大統領自身が国家元首ですから、マスコミが批判をやりすぎたら、治世が揺らぐ懸念があります。かと言って、マスコミが何も批判ができない独裁国家というのも危険です。

 日本の首相の実質的な任期は短く、平均して2年程度でしょうか。4年も持てば長期政権と呼ばれるでしょう。ただ他のG8先進国では4年という時間は大統領や首相の最短任期です。特に問題なければ任期は10年弱ぐらいでしょう。
 日本の首相の任期は短すぎると思いますが、一方で極端な長期政権は腐敗を生み、短期政権以上の弊害をもたらします。そして短期政権で国家体制が維持できるのも、首相が国家元首でないからです。

 ところで天皇の在位期間は即位してから終身ですので、かなり長期になります。外国政府から日本政府を見た場合、元首が短期間で交替していたら、不安になるでしょう。外交関係を安定させるためには国家元首の任期はある程度長い方がいいのです。
 象徴天皇は実質的な政治のリーダーではありません。だから長期政権による腐敗はあまり考えなくてよいのではないでしょうか。

 このように国家元首と行政の実質的リーダーの二重構造は、現代日本の政治にうまく機能していると思います。以下、まとめますと、天皇制の政治的メリットは

①首相のみ批判可にすることで、政治的言論の自由を確保しつつ、治世の安泰(革命が起きない)が図れる
②首相が短期任期の方が政治的腐敗を防げる
③首相が短期任期でも国体の維持が図れる
③天皇の長期終身在位は外国政府との外交関係を安定させる

 さて、今回のブログはここでひとまず終了します。次回以降は天皇制のデメリットやその歴史的背景について考察していきます。 

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