2014年1月16日木曜日

天皇制に替わる国家元首制の考察

 以前、当ブログで天皇制のメリットを書いた。
 要は国家元首と実質的行政のリーダーを分離することで、言論の自由と国家体制の維持が両立できることから、日本の政治には首相と天皇が二人いることが望ましいという論旨だ。
 マスコミに首相は批判できるが、天皇は批判しないというルールを作れば、どんなに国政を批判しても、「これは国体を否定して革命を誘発しているわけではない」という理屈で不敬罪にならずに言論の自由が確保できるからだ。
 だが、最近、鬼塚英昭氏の「菊タブー」に関するビデオを見て考えが変わった。世襲の天皇制もかなり危険な存在だ。前回、このブログで提唱した為政者性悪説の為政者に天皇も含めて考えるべきだろう。
 やはり日本にも世襲制ではない国家元首が必要だ。

 ところで、日本が天皇制を廃止し、完全な共和制に移行したら、国家元首はどうするか。総理大臣をそのまま国家元首にするか。あるいは新たに大統領制を設けるか。
 日本の場合、行政のリーダーは議院内閣制で選ばれた首相が行い、国家元首たる大統領は天皇の国事行為を行う名誉職であることが望ましいと考える。
 現在のドイツの体制がそれに近い。また、カナダ、オーストラリアの場合、行政のリーダーは首相だが、国家元首たる英国国王の代理として総督がいる。この総督も首相より地位が上の名誉職であり、ご当地在住の国家元首代理である。
 議院内閣制の場合、首相という個人よりも与党または連立与党全体が権力を握るので、米国の大統領制にくらべ、独裁体制になりにくい。これは日本の政治に向いている。
 また名誉職の大統領は天皇同様、政治的には中立であることが前提条件になる。中立であるため、マスコミは首相は批判できても大統領は批判しない、というルールを守らなくてはならない。
 以下、日本に大統領制について自分なりにいくつか検討してみた。

1. カナダ、オーストラリア型+外交官OBを起用
 カナダやオーストラリアでは首相が総督を指名するが、同様に日本の大統領も首相が大統領を指名するのが望ましいと考える。
 任期は5~10年程度とし、任期が切れる時期に、現職の首相が次の大統領を指名する。通常、首相より任期は長いことが予想されるが、首相が代わっても、特に問題なければ任期中の大統領はそのまま留任する。
 大統領の役割としては、日本国憲法が定めた(天皇用の)国事行為の他、海外の国家元首たちと接待がある。大統領は政治的に中立であり、あくまでシャンパン外交や典礼、儀式を卒なくこなすことが求められる。すなわち、語学とテーブルマナーと一般教養が大統領に要求される資質だ。
 したがって、首相は旧皇族関係者や外交官OBあたりから、大統領の人材を選ぶ。
 自分は、このカナダ、オーストラリアの総督型が、日本の大統領制に最もふさわしいと考える。

2. ドイツ型+司法トップOBを起用
 ドイツでは大統領は国民による選挙で選出される。したがって、ただの名誉職でなく、一定の権限を持っている。
 ただし、日本では大統領は選挙でなく、「1.」のように首相が指名すべきと考える。大統領と首相を対立させないためであり、そのために大統領は基本的に名誉職である必要がある。
 たとえば、大統領には最高裁判所の判事のように、定期的に国民審査をすれば、民意が反映されることになる。
 ちなみにドイツの連邦大統領は、議会決議による法案を署名拒否できる。
 日本では最高裁判所は国会で決議された法律の違憲審査権がある。
 日本の大統領を最高裁判所長官のOBをはじめ、学者など法律の専門家から選出し、違憲審査権を持たせてもいいかもしれない。この場合、最高裁判所が違憲予備審査を行い、それに基づいて大統領が最終判断する、というやり方が現実的と思われる。

3. 旧ソ連型+衆議院議長を起用
 旧ソ連はトロイカ体制と呼ばれるが、国家元首は最高幹部会議長だった。
 同様に日本の場合、衆議院議長をそのまま国家元首にしてしまうという方法もある。役職名は大統領兼衆議院議長でいかがだろう。
 議長は国会議員であり、国民から選挙で選ばれている。議長はその仕事上の性格から政治的に中立な立場でありながら、国会で議事進行役を務めるのだから、単なる名誉職ではない。
 もともと立法府の長である議長は、行政府の長である首相よりも、地位は上と考えられる。その意味でも議長が大統領を兼任することは妥当だろう。
 ただし衆議院議長の任期は短い。国家元首が首相なみに2~3年で交代していたのでは、外交上、やや問題があるかもしれない。