2016年1月23日土曜日

クイズダービー やらせ否定論に物申す

 どうでもいい話だが、往年の人気クイズ番組「クイズダービー」のやらせ否定論、あるいはやらせ弁解論がネットで出回っている。
 私は裏事情は知らないので、番組出演者や製作者がやらせはなかったと主張すれば、「ああ、そうですか」と引き下がるしかないのだが、今考えると、やらせがなかったとしたら、あまりに面白すぎる番組だった。

 レギュラー解答者の中で漫画家が一番正解率が高く、大学教授が一番正解率が低い。
 これがこのクイズ番組の人気のすべてだろう。
 ネットはおろかPCさえ家庭に普及していなかった時代、大学教授の権威は今より格段に高かった。
 一方、漫画は文化としてまだまだ軽蔑されていた時代。
 漫画はくだらなくてもそれを描く漫画家は思っているより頭がいいのではないか、というような風潮は七十年代初頭からすでにあったような記憶がある。
 だが大学教授を差し置いて、たかが漫画家がもっと頭がいいわけがない。
 そういう常識がまかり通っていた時代だったから、はらたいらの活躍と、篠沢教授の珍解答の組合せは面白かった。
 特に司会の大橋巨泉が毎回、お約束で篠沢教授をけちょんけちょんにけなす。
「あなた、それでも大学教授ですか」
 この決め台詞で全国の番組視聴者は笑い転げたものだ。

 やらせがあったらつまらない。ガチだったら無条件で面白い。こういう価値観は、昭和から平成にかけて、あるいは20世紀末から21世紀初頭にかけて、特にプロレスの歴史的変遷の中で、時代遅れになったと思う。
 WWEはやらせを標榜しながら、世界一の興業成績を誇るプロレス団体である。
 やらせでも面白いものはある。ガチでもつまらないものはある。
 つまらなくてみんなが見向きもしなくなれば、その興業はなくなるが、存続しているということは自分はつまらなくても、面白がっている客がある程度いるということになる。 
 私はWWEの面白さをみんなが理解すべきだと言っているのではない。
 ただやらせかガチかとは別に、面白いか面白くないかを論じる視点を持つべきだと思うのだ。

 よくプロレスと総合格闘技を論じる場合、やらせなら無条件につまらなく、ガチやら無条件で面白い、という価値観を大前提に議論されるが、この大前提が間違っていると思う。

 ある人に言わせれば、およそ格闘技はけんかから発展したようなスポーツで、やらせかガチかに関係なく、どちらも野蛮で嫌い、とのことである。
 彼女はプロレスもボクシングもK-1も総合格闘技も見ない。
 こういう価値観も”あり”だと思う。

 「アイアンシェフ」がすぐに打ち切りになってしまったのも、同じ感じがする。
 やらせかやらせでないかが、ネットでは大きな論点になっていた。
 だが最初から勝負けはやらせであることを標榜した上で、料理文化を紹介するという観点で番組作りをしていった方がよかったのでは。

 いずれにせよ、「クイズダービー」が今後復活するのであれば、自分としては、やらせを最初から標榜した面白い番組を期待したい。